さめないすーぷ

ボルシチウクライナ語: борщ , [ボールシュチュ]; 意訳:「紅汁」[1])は、テーブルビート[2]をもとにしたウクライナの伝統的な料理で、鮮やかな深紅色をした煮込みスープである[3]。
近世以後、ベラルーシポーランドモルドバラトビアリトアニアルーマニア、ロシアなどの東欧諸国の料理に普及した。現在、東欧文化圏のほかに、中央ヨーロッパギリシャ、イランや、北米在住の東欧系ユダヤ人[4]によっても作られており、多くの国で世界三大スープとして好まれている。

ボルシチは、テーブルビートとタマネギ、ニンジン、キャベツ、場合によっては牛肉などの材料を炒めてから、スープでじっくり煮込んで作る。但し、スープの中身は決まっているわけではない。それ以外の具としてソーセージ、ハム、ベーコン、肉だんご、鶏肉などの肉類や魚のから揚げ、ズッキーニ、リンゴ、インゲンマメなどを使ったりもする。ボルシチの素材は地域によって異なり、特にウクライナでは地方ごとに40種類以上のバリエーションがあるが、いずれもスメタナサワークリーム)を混ぜて食べることと、主材料にテーブルビートを使用している点は共通している。
ボルシチを特徴づける鮮やかな深紅色は、テーブルビートの色素によるものである[5]。
通常は温製で供されるが、夏季には冷製で供されることもある。具沢山になるように作るのが一般的であるが、具をすべて漉して汁だけを供する食べ方もある。ニンニクのソースをかけたパンプーシュカという揚げパンを添えることが多い。

ボルシチの語源についてはいくつの仮説があるが、定説はない。マクス・ファスマーの『ロシア語語源辞典』によれば[6]、「ボルシチ」は、欧亜で分布する多年生草のハナウド(ポルシテヴィク[7])に由来しているとある。本来のボルシチといえばこの多年生草でつくったスープをさしていたが、後世にテーブルビートのスープをさすようになったという。しかし、ハナウドは毒性の持つ植物であってスープのもとには使えない食材であること、また「ボルシチ」とよばれるハナウドスープのレシピが現存しないこと、さらにハナウドスープからテーブルビートスープへの移行が明らかにされていないことなど、ファスマーの仮説には不自然な点がある。
料理人の間で人気のある仮説としては[8]、「ボルシチ」(Бърщь)とは古スラヴ語のテーブルビートそのもの呼称でもあり、そのテーブルビートでつくったスープもまた「ボルシチ」と呼んでいた、というものがある。確かに、ボルシチの主な食材はテーブルビートではあるが、「ボルシチ」というテーブルビートの呼称がスラヴ諸語の辞典に登場していないので、これも仮説の域を越えない。
他の説では、「ボルシチ」とは「紅いシチー」(ブリ・シチー;бурі щі / burі shchі)を意味する単語だという指摘がある。シチーはキエフ大公国時代のキャベツ・スープであったが、ボルシチはテーブルビート(ブリャーク、意訳:「紅大根」)が加えられたスープを意味していたという。テーブルビートは温かい気候を好む植物であるために、当国の南方[9]で栽培され、その地方で「ボルシチ」を食べる風習が広まった。一方、当国の北方[10]ではテーブルビートの栽培が不可能であったため、その地方ではシチーを食べる習慣が定着したという[11]。

作り方
水2リットルを鍋で沸騰させ、豚肉でブイヨンを作る。
テーブルビートを千切りにし、塩と酢を加えてフライパンに入れる。ブイヨンから集めた油、トマトピューレ、砂糖を焼き、鍋に入れ加えて炒め煮る。
タマネギ、ニンジン、パセリの根を千切りにして炒める。
仕上がったブイヨンに四角に切ったじゃが芋を入れて沸騰させる。千切りにしたキャベツを加えて10分から15分にかけて煮る。その後、炒めたテーブルビート、タマネギ、ニンジン、パセリ、輪切りのトマト、黒胡椒、ロリエ、バターで炒めた小麦粉を加える。
5分ほど沸騰させる。その後、パセリの葉とサーロとともにおろしたニンニクを加える。沸騰させた後、火を消し、15分から20分にかけて休ませる。
味が薄かったら、塩で調整する。
ボルシチを皿に盛り付け、サワークリームと、細かくちぎったディルを加えて出来上がり。ニンニクのパンプーシュカを添える。

中国、台湾、香港、日本などでは、ボルシチと同じ調味料を用いながら、テーブルビートを用いずに、代用としてトマトを用いた具だくさんでオレンジ色のスープを「ボルシチ」と称している例がみられる。中国は、ソ連との関係が深く、ロシア料理が西洋料理の代表であったが、テーブルビートの入手は困難であったため、正統な「紅菜湯」に対して、トマトで代用したものを「羅宋湯」と称して、洋食店で提供し普及した。「羅宋」は、上海語でルーソンと読むが、英語の「Russian」に漢字を当てたもの[13]で、「ロシアの」を意味する。香港では「茶餐廳」と呼ばれる喫茶レストランや学校の食堂でもよく出る洋食メニューである。
日本でのボルシチの紹介は、新宿中村屋にロシアの作家、ウクライナ人のヴァスィリー・エロシェンコが伝え、1927年に販売されたものが本格的な始まりとされているが、このボルシチはテーブルビートを使用せず、トマトを煮込んだものである[14]。
Wikipediaボルシチ」より